関西インディミュージック研究会

関西でインディミュージックについての理解を深めることを目的としたリスナー中心の集まりです https://twitter.com/INDIE_BE

2015年の活動の振り返り。

 

あっという間に年末ですね。

今年はどんな音楽を聴いて過ごされたでしょうか?

 

 

私は、年初から音楽との距離感を考えさせられる一年でした。

このブログを読まれる方々は、音楽ジャンキーから社会人になられて音楽とは少し距離ができた方までさまざまだとは思いますが、そんな皆さんが自分なりのペースで音楽との良い距離感を見つけられることを祈ります。

 

ありがたいことに研究会参加者の方から「関西インディミュージック研究会ってなんだ?」と話題にされているということも耳にしました。来年は、そんな方々ともどこかでお会いできれば幸いです。

 

今年度のアバンギャルドバンドの筆頭であろう Girl Band が多くのメディアでリストアップされていたことに驚かされました。

 

完成間近だったアルバムを制作し直したことでも話題になったGrimes が今年の『Art Angels』でメジャーでもなくインディでもない音楽性及び姿勢を見せてくれたことは一人の音楽リスナーとして明るいニュースでした。

 

 Appleミュージックなどのストリーミング系の音楽ビジネスが興隆し始めたことも今年の重要な事柄のひとつです。利用者の一人としては第一に、レコード屋などにいくことがなく、テレビなどで流れる音楽をベースとして、そこからAmazonYoutubeのオススメ機能を利用して派生する音楽に囲まれた状態の「ライトリスナー」を「ヘビーリスナー」とを一元的に同じシステムの利用者としたことは良いことだと思いました。なぜなら、「ライトリスナー」でもほんの少しでも手を伸ばせば同じシステム内にある古今東西充実したラインナップに簡単に触れられる環境ができたと思えたからです。所謂日本のメジャーどころを除けば、Appleミュージック充実は驚嘆せざるを得ないほどに充実しています。

 第二に、お金がない人々にも音楽が解放されたと思いました。今後、一枚一枚のアルバムを買う費用が抑えられることで、貧富の差による音楽格差が縮まれば良いと思います。(余談ですが、音楽のための食費削りが災いし、救急車のお世話になった人がいると耳にしたことがあります)

 翻って、一番の問題のアーティストの取り分については、テイラー・スウィフトが抗議したことで、サービス開始直後の試用期間はフリーとされていたアーティストへの再生数分の料金の支払いが認められた事例があったことを思えば、僅かながらでも明るい未来が想像できるのではないでしょうか。

アーティスト側としても、年に1枚も出ないことも少なくなく、一人当たり1枚の購入が基本のアルバムで稼ぐよりも、とにかく多くの人に聴いてもらい、継続的に数回ライヴに来てもらう方が収益があがるようにも思います。

 

 日本でのことについて述べられることは、国内インディのアーティストがこれほどまでに素晴らしい音楽を創り出しているにも関わらず、十分な評価を得られていない現状です。これほどまでに多様で「ガラパゴス」的ではない音楽が国内にあることは、日本音楽史上初めてのことだと断言できます。海外の作品群と比べても全く遜色ない独特の音楽をつくるアーティストが国内インディに数多くいるのです。それは、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ビートミュージックなどの海外起源のジャンルであろうともです。

箔付きのアーティストでしか自信をもって評価できないことは、悪習でしかありません。今や日本の誇りのYMOでさえも、箔付けしてから国内活動を開始したことは忘れてはならないことです。

  メジャーシーンで活躍する数多のアーティストが、インディシーンで活躍するアーティストをフックアップしようとしない姿勢には、憤りしか感じません。インタビューなどで名前を出すことすらしようとしないことは、以前からの疑問です。国内でそういったことを考えて活動しているのは、ノーベンバーズの小林さん、Seiho、Koji Nakamura(ナカコー) などの一部を除けばほとんどいません。海外に気触れるのは全く問題ありませんが、ビョークトム・ヨークが積極的に新しいアーティストを育てようとする姿勢をも含めて模倣して欲しいものです。

 

 国内インディのアーティストを年間ベストアルバムに頑に選ぼうとしない某大手音楽メディアなどは、日本の音楽を嫌悪しているのか、聴いていないのか、それとも箔付けされていない音楽を掲載することを恐れているのか、全く理解できません。さまざまな点で海外の模倣をしようとするのであれば、FACT Magazine 、Fader、NME、Pitchfork などのメディアの新しい音楽を見出そうとする姿勢こそを第一に見倣うべきです。

 そういった役割を果たしていない国内アーティストや国内メディアが音楽全体の循環に寄与しているかどうかの判断はこれを読んで下さっている皆様にお任せします。

 

 決して音楽界隈の全てを批判したいのではありません。悲観的なことだけがあったのではありません。例えば、『Jazz The New Chapter』 シリーズは音楽全体に非常に理解のあるメディアだと思います。一つのシーンが、アーティストの集まりのみでは誕生し得ないことを理解し、アーティストとリスナーとの共創関係において一つのシーンが誕生するということを改めて証明したと思います。著者の尽力の甲斐あってか、現代ジャズの第一線で活躍するアーティストがかなりの頻度で来日していることは、非常に喜ばしいことです。

 

 最近、大手音楽メディア『Rolling Stone』誌の注目すべき音楽の一つとして、日本のジュークが挙げられていました。数多くの先例に異ならず、海外での評価に倣って多くの日本人が日本のジュークを「Japanese Juke」として「発見」するのでしょうか。同様に、今のインディに溢れんばかりに存在する本当に良い音楽は、10年後に「日本インディの最盛期」として懐古的に美化されたかたちで「発見」されるのでしょうか。それとも、ほとんど誰からも見向きされることもないインターネットを漂う塵と化してしまうのでしょうか。

 

発足理由からしてそうなのですが当研究会は、そういった音楽に寄り添うカタチで活動を続けたいと改めて思いました。

 

研究会員の後輩君とそんなことを話し合った年でした。